銀行で販売される終身保険で人気の商品(銀行がおすすめとして販売する商品)にはどんなものがあるのか?

この記事の内容


預金者のみならず銀行も困る低金利

低金利政策などにより、現在の預金の金利というのはほとんどあってないようなものだ。

多くの預金者は金利が付かず困っていることだろうが、困っているのは預金者だけではない。サービスの提供者である銀行も非常に困っていたりする。

お金の貸し出しについても、低金利の影響で全く収益が成り立たず、また激しい競争によって、より低収益になっているところもあるだろう。

預金の低金利対策、銀行の収益対策の面で盛んに販売されている銀行での終身保険

そういった環境下で銀行が積極的に販売を行っているのが生命保険や投資信託などの金融商品だ。

銀行の場合は、他から資金を持ってこさせることなく、顧客の預金を置き換えていくことで手数料収入を得られることができ、現在の環境下では最も収益を稼ぐことができるビジネスの1つになっているはずだ。預金者にとっては預金より少しばかりよい運用利回りの提案をうけることができる。

そして、銀行が扱う生命保険の中でも、占めるウェイトが大きいのが終身保険だろう。

銀行で販売される終身保険で、人気の商品(銀行がおすすめとして販売する商品)にはどんなものがあるのだろうか?今回はこれについて考えてみよう。

一時払終身保険

銀行で積極的に販売されているのが、一時払の終身保険だろう。

これは、保険料を契約時に一括で保険料を払い込むタイプで、払い込む保険料が高額なため比較的お金に余裕のあるリタイヤメント層以上の年齢の人に人気がある保険だ。

したがって、高齢者にも販売されることもあるが、解約までなども含めた仕組みやメリットを十分に理解していないような場合には、途中解約などにおいてトラブルもおこしやすい保険商品だ。

人気のある商品といえば以下のような商品だろう

円貨商品

ふるはーとJロードプラス(住友生命)

一定期間を経過すると死亡保険金額が増加する円建一時払終身保険
エブリバディ(明治安田生命)10年後から死亡保障や解約返戻金額が増える円建一時払終身保険

外貨商品

プレミアレシーブ(第一フロンティア生命)

定期支払金を受け取ることのできる外貨建一時払終身保険

ファイブ・ステップUS(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命)

5年後から死亡給付金額や解約返戻金額が増える外貨建(米ドル建て)一時払終身保険

サニーガーデンEX(メットライフ生命)

定期支払金を受け取ったり、円換算で目標値を設定し到達した場合は円建終身保険へ自動移行する機能を選択できる外貨建一時払終身保険

しあわせ、ずっと(三井住友海上プライマリー生命)

円換算で目標値を設定し、到達した場合は円建終身保険へ自動移行する外貨建一時払終身保険

ロングドリームGOLD(日本生命)

円換算で目標値を設定し、到達した場合は円建終身保険へ自動移行する外貨建一時払終身保険

平準払終身保険

平準払終身保険は、保険料を毎月、もしくは毎年など既定の期間、保険料を払い込むタイプの終身保険だ。

貯蓄性があるため、コツコツ保険料を払い込むことを好む資産形成層(リタイヤメント層よりも若い)の人に人気がある保険だ。

貯金が苦手な人にとっては、若いうちに契約しておくことで、少ない保険料でも、長い期間で多くの解約返戻金を作っていくことができるのがメリットだ。

また、銀行においては、全期前納を使った契約などで、平準払終身保険を一時払終身保険のように扱う提案も一部見受けられる。このような案件が多いのは預金を握っている銀行ならではだろう。

人気のある商品といえば以下のような商品だろう

円貨商品

ふるはーとF(住友生命)

契約から一定期間死亡保険金額が払込保険料相当額となる低解約返戻金型終身保険。その一定期間が経過すると大きく死亡保険金額が増える。全期間の保険料を一括し払ってしまう全期前納タイプもある。

ふるはーとL(住友生命)

シンプルでわかりやすい平準払終身保険。保険料を払い込んでいる期間は解約返戻金が低くなる低解約返戻金型の典型的な終身保険。

MY介護Best(太陽生命)

厳密には終身の介護年金保険となり、終身保険とは異なるが、低解約返戻金型の終身保険と似ている。大きく異なるのは、死亡に備えるのが目的ではなく、介護状態になったときのために備えるという点だ。

しあわせの階段(明治安田生命)

保険期間の経過に応じて死亡保障額が逓増していく逓増型の終身保険。現在(2017年8月)のところは取扱い休止中。

一生のお守り(損保ジャパン日本興亜ひまわり生命)

オーソドックスでシンプルな低解約返戻金型の終身保険。

外貨商品

米国ドル建終身PG(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命(PGF生命))

外貨建終身保険で通貨は、米ドルとなる。基本タイプの場合、低解約返戻金型でもないシンプルな終身保険だ。契約通貨が日本円ではなく、米ドルであるというだけの違いとなる。為替リスクはあるものの、仕組み自体はわかりやすい商品となる。

メリット 終身保険にはどのようなメリットがあるのか?

終身保険の一番のメリットというと、それは一生涯の保障だ。

貯蓄性だとか解約返戻金にばかり目がいきがちであるが、この一生涯の保障に魅力を感じない人はそもそも終身保険に入るべきでなく、お金も他の手段で運用すべきだろう。

また、終身保険の比較対象となりやすいのが定期保険であるが、定期保険は保険料が手軽なメリットがあるが、逆にデメリットとして保険期間が一生涯ではないことと、高齢になればなるほど保険料が急激に上がるというデメリットがある。

そういったことから定期保険の場合は、本当に死亡保障の必要性が高まる高齢世代になればなるほど保険料が高くて契約できなくなる(契約継続を泣く泣くあきらめる)ということがある。

しかし、終身保険であれば、ほとんどの場合保険料は一定で、しかも若いうちに契約しておけば保険料も安い。

保険料の払込期間を工夫すれば、仕事をリタイヤする頃には保険料自体も払い込みを終えておくこともできる。

保険料の払い込みが終われば、いつ解約しても大きな損を被ることなく、解約返戻金も受け取ることができる場合も多い(最後の虎の子資産としてもっておける)。

定期保険と終身保険を比べるような記載をインターネットなどでも見かけることもあるが、その比較記事をみると途中で解約した場合の仮定である場合がほとんどだ。

定期保険のように保障に期限があるものと、一生を保障するものという差があるのにもかかわらず、解約返戻率でお得を判断することには問題が多いとも思える。

デメリット 終身保険にはどのようなデメリットがあるのか?

銀行でも、この終身保険に関するトラブルについては近年問題になることもあるが、トラブルの原因のほとんどは途中解約にかかわるものだろう。

気が変わって、もしくは銀行側と何らかの問題が生じ保険を解約しようとした場合、元本(支払保険料)を大きく下回り損失が発生することで大きな問題に発展する場合があるだろう。

これらの原因は、一生涯の保障の部分に魅力を感じずに、解約返戻金の返戻率で、または預金の代わりとして(もちろん代わりには絶対にならないが…)考えて契約したことが原因だろう。特に預金を保険にひっくり返す営業を行いやすい(預金情報を握っている)銀行特有の問題とも言え、預金情報を握らない、保障を訴求する生命保険会社の営業ではぐっと少なくなる問題ではある。

短いもので5年、よくあるもので10年、15年、20年、それ以上の年数を契約したままにしておかないと元本(支払保険料)を解約返戻金が上回ることはないため、その点を心得ておく必要がある。

保険として、死亡保障として、違和感を感じる商品も

その他、ふるはーとF(住友生命)のように契約から一定期間死亡保険金額が払込保険料相当額となる低解約返戻金型終身保険もある。

その一定期間が経過すると大きく死亡保険金額が増えるのは理解できるが、それはそれとして契約から5年または、10年の一定期間の中で、保障面が弱いのはどうかと思うところもある。

また、この保険は低解約返戻金型なので期間中の解約返戻金が少なくなってしまうというデメリットも合わせて持っている。

これは、期間経過後の死亡保障額や解約返戻金をよくするための苦肉の策だと思われるが、一生涯の保障を訴求する終身保険として、契約からの一定年数の間は保障面でとても大きな問題を抱えてしまっている。

程度は異なるが、現在取扱い休止中のしあわせの階段(明治安田生命)についても少し似たような部分をもっている。

保険会社も商品開発において解約返戻金に注力する余り、保障部分をできるだけ薄くしようとしていて、または一定期間の解約返戻金を少なくしてまで、解約返戻金の返戻率を上げることに必死なのだろう。

こういった返戻率ありきの商品開発もトラブルを誘発する原因になっている可能性も否定できない。

銀行の終身保険がいらない(不要な)人

こういったことから、銀行の終身保険がいらない(不要な)人とはどのような人なのだろうか?

一生涯の保障(介護への保障なども含む)に何の魅力を感じない、運用利回りのみで契約を検討しているのであればやめた方がよい。

運用利回りなんて保険会社や銀行の手数料にとられる部分が多いためたいしたことはなく、長い間お金を拘束されるというデメリットの方が大きいからだ。

それであれば、自分で考えて、許容できるリスクに応じて、資産配分を決め、投資した方が運用利回りもいいし、何より資金が拘束されないため安全でもある。

また、途中解約の可能性が高いある場合は契約するべきではない。その他、仕組みが理解できない人もこういった保険は契約すべきでもないだろう。理解できない複雑な商品という時点で、その商品にも大きな問題を抱えている場合が多いからだ。

ドル建てや豪ドル建ての外貨建て終身保険のメリットとデメリット

外貨建ての終身保険は、基本全てのお金のやりとりが外貨建てとなる終身保険だ。

円入金・円支払いにかかわる特約や円でターゲット設定ができる特約などがある場合もあり、円で取り扱われていると誤解を持つ場合もあるかもしれないが、基本全て商品の仕組みなど(契約・死亡保険金・解約返戻金など)は全て契約時に選択した通貨(外貨)だ。

銀行では、一時払終身保険を中心として外貨建て商品も積極的に提案・販売している。

なぜかというと、銀行側が受け取る手数料が高いことが一番の理由で、もう一つが、利率が高く提案する際に顧客の印象がいいということだろう。

メリットも以下のようにあるが、デメリットも大きいので契約する際にはしっかりと理解した上で契約する必要があるだろう。

外貨建て終身保険のメリット

外貨建て終身保険のメリットと言えば、円のものと比べて利率が高いことだろう。

一生涯の保障を終身保険で準備しようと考える場合も、円建ての終身保険よりもより少ない保険料で、多くの保障を準備できる場合が多い。

また、外貨で運用を行うため、為替が安く買えて、それが高くなったときに円に戻せれば為替差益を得ることもできる。もちろん逆の為替差損が発生することもあるのでそれはデメリットにもなる。

また、その他の大きなメリットとして、通貨分散ができるということがあるだろう。

今の時代、どの通貨が安全でどの通貨が安全でないかを判断することはとても難しい時代となってしまった。そのため、日本円だけで資産を保有することはそれもそれでリスクであったりもするだろう。

そのため、資産分散(外貨への分散投資)の手段として、保険を全保険資産のうち2〜5割程度外貨資産にしておくのもそれほど悪いことでもないように個人的には思うところだ。

外貨建て終身保険のデメリット

為替リスクや金利リスクが非常に大きいということがあるだろう。

上でも外貨建終身保険は円建終身と比較すると利率が高いことに触れたが、為替が悪い方向に触れた場合、長い期間置いた利率分の利益でも簡単に棄損してしまうこともある。

また、一時払保険の場合で、円入金特約などを使用して円で外貨を購入して契約する場合、一括して外貨を購入するがそれにも問題がある。

為替が安いときであれば安く買えて利益につながるが、逆に高いときに買ってしまうと利益をだすことがとても難しくなってしまうからだ。

そういったことから、外貨で終身保険を契約するのであれば、おすすめは、一時払よりも平準払いの外貨終身保険だろう。円で外貨を買い保険料をコツコツと払い込む場合、為替を購入するタイミングを分散することができ、リスクを軽減することができるからだ。

円ベースでの換算保険料は毎回異なるためドル・コスト平均法にはならないが、多額のドルを1回のタイミングで購入する際のリスク(高く買いすぎるリスク)を防ぐことにもつながる。

その点も、商品性のシンプルさからも米国ドル建終身PG(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命(PGF生命))は、個人的におすすめできるものだ。私の場合は、一番シンプルな基本タイプが好きだ。

また、市場価格調整など金利の影響により損をするリスクが大きい。市場価格調整と聞いてもわかりにくい人も多いだろう。

こういったことから外貨建ての終身保険は、ある程度保険商品にも詳しく、為替に詳しい人でないと手を出すのは避けるべきで、契約するのであれば、最低限、契約概要や注意喚起情報等の書類を読んでリスクを完全に熟知しておいた方がよい。

一番わかりにくいところとは、市場価格調整にかかわるところだと思うが、これを理解できなければ市場価格調整のある外貨建ての生命保険は契約しない方がよいだろう。

なぜなら、現在の金利情勢は最低水準であり、これから金利が上昇すれば、この市場価格調整の面においては損失を被る可能性が高いからだ。

メリットとデメリットをよく理解した上で契約を

少し長くなってしまったが、銀行で終身保険を検討するにあたっては、本当に一生涯の保障が終身保険で必要なのかということを今一度考えてみる必要があるだろう。

利率がいいからと言う理由で契約した場合や谷メリットを感じないような場合は、将来問題が起こるリスクも高いだろうから、契約しない方が賢明だ。

死亡保障や相続対策などの生命保険としてのメリットを戦略的に活用したいということであれば、それは終身保険を活用するということでいいことだと思う。

契約の検討にあたっては、銀行の担当者が、どこまで顧客である自分のことを考えて提案しているのか、具体的にはなぜ終身保険でなければいけないのかに焦点をあてて話を聞いてみるとよい。

そして、終身保険の本当のメリットを話せない、利率がよい程度しか知識のない銀行員からはこういった保険は契約しないことだろう。