日本生命の「ラップドリーム」はどのような人におすすめできる変額年金保険か?

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守りながらふやす変額年金保険「ラップドリーム」

ラップドリーム(ニッセイ指定通貨建年金原資確定部分付変額年金保険(米ドル建・豪ドル建)以下、「ラップドリーム」)は、2016年4月から、三菱UFJ信託銀行で販売されている変額年金保険だ。

正式名称は、「ニッセイ指定通貨建年金原資確定部分付変額年金保険(米ドル建・豪ドル建)」となり、正式名称のとおり、引受保険会社はニッセイ(日本生命保険相互会社)となる。

基本的なしくみも正式名称のとおりで、指定通貨建(米ドル、または豪ドル)で運用し、年金原資確定部分(定率部分・守る部分)と運用実績連動部分(ふやす部分)に分けて運用される変額年金保険だ。

この「ラップドリーム」の契約を考えている人にとって、この保険はどのような人にすすめられる保険なのだろうか?ここでは考えてみよう。

正式名称にあった商品特徴以外の特徴

正式名称にあった商品特徴以外の特徴にも触れておこう。
大きなものは以下の2つだ。

  1. あらかじめ決めておいた(円建ベースの)目標金額に到達した場合、運用成果を円建で自動確保する。
    また、据置期間(10年)中に目標に到達しなかった場合は、繰延べ(最長5年)が可能。
  2. 死亡時の保険金額は基本保険金額(=一時払保険料)が指定通貨建で最低保証されている。
    また、別途の特約(円建死亡保険金特約)を付加することで、基本保険金額を円建で最低保証することができる。

運用部分に魅力はあるか?

続いてこの「ラップドリーム」の運用に関わる部分の魅力についても考えてみよう。

結論からになってしまうが、運用部分に関わる魅力は、現在(2016年7月時点)の運用環境においては、相当に低いとしか言えないだろう。

これについてはもちろん商品のしくみだけの問題ではなく、現状の世界的な低金利の影響が大いにある。

この商品の特徴として一時払保険料(基本保険金額)を「ふやす」部分である運用実績連動部分と、「守る」部分である定率部分に分けて運用される。

その、分配割合はというと、2016年7月26日時点の契約で確認すると、米ドルで95.9(定率部分):4.1(運用実績連動部分)、同じく豪ドルでは91.2:8.8となる。

円建死亡保険金特約を付加した場合は、さらに運用実績連動部分の割合は小さくなり、米ドルで99.0:1.0、豪ドルでは95.7:4.3となる。

何が言いたいかというと圧倒的に運用にまわす資産の割合が少ないのだ。

これでは、運用にまわした部分に多少の利益が出たとしても全体に対する割合としては微々たるものだろう。増える見込み的に相当に厳しいのだ。

もちろんこの割合は現在の低金利が影響しているため、金利がもっと高ければ、契約における運用実績連動部分の割合が高まるのではあるが、現状では当分無理だろう。

現状の金利水準であれば大きな為替差損リスクを負う

現在のような状況下で運用が全く期待できない場合、どのような影響があるのだろうか。

大きな影響としては、運用成果自体が契約した指定通貨の為替の値動きに完全に左右されてしまうということがあるだろう。

この点においては単純に為替を買っているのと同じようになってしまうのだ。

もし、運用成果がある程度あれば、たとえ為替差損が生じたとしても、その差損を運用成果である程度まで吸収することができる。

しかし、運用成果が全く期待できないような状況であれば、為替差損が出た場合、もろにその為替差損をかぶってしまうことになりかねない。

そういったことから現状で外貨を保有していない人が円貨を外貨に換えてこの保険を契約するのであれば、それはそれなりにリスクが高く、単純におすすめはできないだろう。

それであれば、単純に外貨預金とした方が余計なコストを取られないため金利が高いし、市場金利調整などの途中解約リスクなども負わなくて良い分まだまだマシである。(外貨預金も今は魅力薄でおすすめはしないが…)

「ラップドリーム」をすすめられる人は?

それでは、この「ラップドリーム」をすすめられる人というのはどのような人だろうか?先ほど日本円を外貨にして契約することはおすすめできないと書いた。

もちろんそういった人にはおすすめできないが、逆に外貨を既に保有している人で特定のニーズがある人にはおすすめできる部分もあるだろう。

例えば、これまで外貨を保有し続けていて、ほったらかしにしているような人だ。

そのような人で、日本円換算でこれぐらいになったら、日本円に戻したいと考えているような人にはおすすめできる。円建で運用成果を自動的に確保できる機能が使えるからだ。

このようなしくみ自体は外貨預金などにはないし、こういった保険商品独特の機能だ。

そういった特定のニーズをもった一部の人にはおすすめできるだろう。

「円建死亡保険金特約」は付加すべきか?

また、「円建死亡保険金特約」についても少し触れておこう。

この「ラップドリーム」の死亡保険金額は、基本保険金額(一時払保険料)が(指定した通貨ベースで)最低保証されているが、もちろん言葉のとおり円建ベースで保証されているわけではない。

そこで、円建ベースで最低保証するための特約が、この「円建死亡保険金特約」となる。

この特約を付加することで、死亡保険金額の最低保証が円建で行われるようになるが、デメリットも大きい点には注意が必要となってくるだろう。そのデメリットとは、積立利率が大幅に下がってしまうことだ。

積立利率が下がってしまうことで保険料のうちの運用実績連動部分にまわされる割合が(現状でも少ないのに)さらに少なくなってしまう。

上記(7月26日時点)の米ドルの指定通貨でこの特約を付加した場合、その運用実績連動部分にまわされる割合はたった1%だ。ほぼ0と言える数字である。

こうなってくると運用商品ではない。ただの為替に連動する為替商品だ。

「円建死亡保険金特約」をあえて付加するという選択肢も

しかし、「円建死亡保険金特約」をあえて付加するという選択肢もある。

どうせこの特約をつけない場合でも運用実績部分が微々たるもので運用とは言えないぐらい少ないということはある。

そのため、あえてこの特約をつけてしまうという方法もあるのかもしれない。最初から運用益などを狙わず為替差益だけを狙う手法だ。

その上であれば死亡保険金が円建ベースで最低保証されるのであれば安心で、悪くないだろう。

現状の金利水準では万人にすすめることは難しい

現在の金利水準が実際よりも高ければこの商品に対する見方というのは変わってくるかもしれない。

しかし、現状では運用の有効な手段として万人にすすめられるかというと、とても難しいところだ。

上で書いた商品の機能などに魅力を感じたならば検討してもよいというレベルではないだろうか。(しかし、検討にあたっては途中解約リスクなどの各種リスクについて念入りに検討する必要がある。)

また、ペットネームには「ラップ」というワードが入っているが、そもそも運用比率が相当に低く、そのラップの良さを現状の金利水準では生かせない商品でもある。現状ではその「ラップ」に期待ができない。

そういったこともあり、ここでは特別勘定の「ラップ」部分については深く触れていない。

この「ラップドリーム」については、現在の低金利が解消するまで様子見でもよいのではないだろうか?

契約をするとしてもその後で遅くないだろう。