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通常の生命保険では満たせないニーズを満たすのは「ミニ保険」?
リスクに少額で気軽に加入できる「少額短期保険」
最近「ミニ保険」という言葉を聞くことも増えてきたように思う。
もちろん、ミニ保険というのは正式な名称ではなく、正式名称は「少額短期保険」というものだ。
ミニ保険と呼ばれるとおり、少額短期保険のおおまかなイメージはというと、保険金額や期間が通常の保険商品と比較して一定の範囲内の小さい(ミニサイズな)保険のことである。
今回は、このミニ保険とも呼ばれる少額短期保険について、簡単な概要やメリット・デメリット、実際に少額短期保険会社を比較・検討するにあたって最低限チェックすべき重要なチェックポイントについて少し考えてみよう。
少額短期保険とは?
まず、「少額短期保険とは?」についてもう少し詳しく考えておこう。
保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額、保険期間1年(第二分野については2年)以内の保険で保障性商品の引受のみを行う事業として、「少額短期保険業」が設けられているが、その少額短期保険業者(少額短期保険会社)が提供する保険商品が「少額短期保険」である。
少額短期保険業者(少額短期保険会社)は、通常の保険会社と異なり、保険の区分に応じて1被保険者について引受けできる保険金額に上限が設けられている。
また、少額短期保険業者に課される規制については、一般の保険会社と比べると緩やかになっており、設立や運営等が小規模な業者であっても行いやすくなっているのが特徴だ。
上記をまとめると、名前のとおり、一般的な保険会社の生命保険商品と比較して、少額で短期の「ミニ保険」とでも言えるような商品内容となっているのが特徴だ。
なお、上記のとおり業者(少額短期保険会社)にかかる規制が緩やかであるため、ある特定のニーズに絞った独特な商品を提供している業者(少額短期保険会社)も数多くある。
例えば、通常保険会社には生損兼営が認められていないが、少額短期保険業者には生損兼営が認められているため、生損両方の分野をカバーする保険商品を提供することも可能で、そのような商品を提供する少額短期保険業者もある。
少額短期保険のメリット
まずは、少額短期保険のメリットについて考えてみよう。
メリット1 手頃な保険料で最低限の保障を準備することができる
まず1つめのメリットは、手頃な保険料で保障を準備することができるということだ。
以前に書いた記事「SBIいきいき少短の死亡保険はおすすめな少額短期保険(ミニ保険)なのか?SBIいきいき少短の死亡保険のメリットやデメリット、評価について考える」でもSBIいきいき小短の商品を紹介しているが、この商品のように、誰でも払うことができるような手頃な保険料で最低限の保障を準備することができるということがある。
保険に加入することを考えた場合、もちろん全ての人に高額な保障が必要というわけではない。
年齢や家族構成等の状況によって必要な保障額が変わってくるため、それほど大きな保障が必要でないという人もたくさんいることだろう。
そのような人たちにとって、少額短期保険を用いて最低限の保障を準備することは、最低限の出費(コスト)で、最低限の将来の安心(保障)を買えるということにつながっている。
メリット2 一般的な生命保険会社では加入できないできない人でも加入できる場合がある、または、一般的な生命保険会社では扱っていない保障を扱っている場合がある
もう1つのメリットは、一般的な生命保険会社では加入できないできない人でも加入できる場合がある、または、一般的な生命保険会社では扱っていない保障を扱っている場合があるがあるということだ。
これも以前に書いた記事「発達障害などの障害者と生命保険 ぜんち共済の「ぜんちのあんしん保険」について考える」でも取り上げているとおり、例えば、障害を持つ人や、高齢の人、持病を持つ人など一般的な生命保険では契約が難しい人でも容易に契約できるような商品があったり、一般的な生命保険会社が市場が小さいなどを理由に儲からないと判断し通常商品化しないような商品を通して一般的な生命保険会社では扱っていない保障を扱っている場合もある。
一般的な人の多くには必要のない保障でも、一部の人にとってはとても重要な保障というものもあり、それに応えてくれている唯一の存在となっている場合もある。
また、一般的な生命保険会社では生損兼営が禁止されているが、少額短期保険会社の場合は生損兼営は禁止されていないため、生保分野商品・損保分野商品両方の分野をカバーする独創的な商品もあったりする。
上の「ぜんちのあんしん保険」などもそうだ。
独創的な商品で、本当に保険を必要とする少数の人達に保険商品を開発・販売している少額短期保険会社も数多くあり、これが少額短期保険会社の存在価値を高めているとも言える。
少額短期保険のデメリット
メリットの次は、デメリットについても考えてみよう。
デメリット1 生命保険料控除の対象とならない
全ての少額短期保険についてこれは言えることであるが「少額短期保険(ミニ保険)」の場合、生命保険料控除の対象とはならない。
このようなことから、大きな保険料を払うような保障を準備する場合は、できる限り一般の生命保険を使用して生命保険料控除を活用できるようにすべきだろう。
大きな保険料をこの少額短期保険に払うのは得策ではない。
少額短期保険の加入(契約)にあたっては、最低限の保障をできるだけ定額で準備することを最も心がけるべきだ。
デメリット2 手頃な保険料であっても割安な保険料とはならない場合がある
もう1つのデメリットは、手頃な保険料であっても割安な保険料とはならない場合があるということだ。
少額短期保険の場合、多くの保険商品において保険料は手頃な保険料だ。
毎月の保険料は、1000円を下回ることだってあるし、商品と年齢、性別によっては500円を下回ることだってある。
このような場合、確かに保険料は手頃と言える。
しかし、その保険料が保障に対して割安かというとそうでない場合もある(割高になる場合がある)ということに注意が必要だ。
もう少し、保険料を払えば一般の生命保険商品で大きな保障を準備できる場合もあるだろう。
そのような場合、その一般の生命保険を契約できるのであれば、そちらの方にすべきだ。
生命保険は、多くの場合長い期間にわたって払い続けるものだ。
月々は少しの保険料の違いでも、それが1年になって、またそれが数十年以上となるに従って割安な保険とそうでない保険との差は大きくなるものだ。
上の生命保険料控除のことも含めて考えると、より割安さに差が生じる場合もあるだろう。
デメリット3 小規模な業者(少額短期保険会社)が多く、一般的な生命保険会社以上に財務状況等にリスクがある
少額短期保険会社を起業することは、もちろん簡単なことではないものの、一般的な生命保険会社を起業するのに比べれば、そこまでは難しいものではないだろう。
最低資本金の基準1つををみても一般的な生命保険会社は10億円に対し、少額短期保険会社の場合1,000万円と、その起業の難易度や、監督省庁の監督体制などにも大きな違いがある。
もちろんのこと、財務的に問題が生じた場合、一般的な生命保険会社と比べると少額短期保険会社の方が破綻等のリスクが高まりやすいだろう。
また、少額短期保険会社の破綻にあたっては、一般的な生命保険会社では存在する契約者保護機構のような契約者を保護する機構の様なものは、少額短期保険にいたっては存在しないことに注意が必要だ。
一般的な生命保険とは異なり、少額短期保険は保険会社の破綻時に契約は保護されないと基本的には心得ておくべきだ。
契約内容が少額かつ短期であれば、契約者が被る損害は最小限程度であると想定されるため一般的な保険会社の保険商品(例えば終身保険など)と比べると大きく問題となるようなことはないと思うが、契約する保険は最低限の期間・金額にとどめておくことが重要となってくるだろう。
少額短期保険(ミニ保険)を扱う少額短期保険会社を比較・検討・加入するにあたって、最低限チェックすべき重要なチェックポイントとは?
次に、少額短期保険(ミニ保険)を扱う少額短期保険会社を比較・検討・加入するにあたって、最低限チェックすべき重要なチェックポイント等について考えてみよう。
全国に支店があるような一般的な生命保険会社と違って、少額短期保険会社というのは、インターネットにおける直販が主な販売方法という少額短期会社も多い。
チェックできるポイントというのはそう多くないと思うが、特に見ておきたいポイントについて考えてみよう。
チェックポイント1 ホームページ(ウェブサイト)における重要書類の掲示状況を確認する
チェックポイントとして一番重視すべきはホームページにおける記載事項だ。
このホームページの情報しか判断材料がないという商品も多いため、ホームページ上に情報がしっかり開示されていない、またはその内容がしっかりしていないなど何らかの問題があるような少額短期保険会社は注意した方がよいように思う。
具体的には、保険商品ごとにおける「契約概要・注意喚起情報」、「ご契約のしおり・約款」、「重要事項説明書」などがPDFなどの電子文書にてホームページ上にしっかり掲示されているか、そして、それらの書面がわかりやすく、詳細に記載されているか等について見るとよいだろう。
一般的な生命保険会社の保険商品のようにホームページでは詳細に保障内容等について記載されていることは少ないため、重要なのは、「契約概要・注意喚起情報」、「ご契約のしおり・約款」をよく読み込むことだ。
チェックポイント2 財務状況を確認する
もう1つのチェックが必要な項目として、財務状況があるだろう。
貸借対照表および損益計算書については、少額短期保険会社のホームページに掲載されているだろうし、場合によってはディスクロージャー資料等も掲載されているだろう。
貸借対照表および損益計算書などを見ていると、どれくらいの利益や費用がかかっているかもわかるし、資産状況などについても確認することができる。
これらが思わしくない場合は、将来破綻などの心配もあるだろう。
逆に良すぎる場合はどうかというと、これも注意が必要で、保障内容に対して保険料が割高である可能性も考えられる。
もちろん、少額短期保険会社が徹底したコスト管理・努力をしているだけであって、保障は妥当である場合もあるので、全ての儲かっている少額短期保険会社が割高とも言えないだろうが…
調べても情報がわかりにくいような少額短期保険会社、情報開示に消極的な少額短期保険会社はできる限り避けておくのが無難だ。
少額短期保険は一般生命保険で満たせないニーズを満たす必要不可欠な存在
少額短期保険やそれを提供する少額短期保険会社は、ミニ保険、ミニ保険会社などと呼ばれることもあって、取るに足らないぐらいのものかと思うと、実際のところはそうでないことに気がつくだろう。
全体の中の割合でいくと少数ではあるものの、それらの保険商品を必要とする人たちがいて、少額短期保険のそもそもの存在価値やニーズというのは確実にあるのだ。
そういった人たちにとっては、一般的な生命保険では対応できないリスクに備えるために必要不可欠な存在であったりする。
保障の必要性や割高・割安の判断、少額短期保険会社の信頼度など一般の人に取っては、少額短期保険会社でない一般の保険会社以上に判断が難しいかもしれない。
しかし、上で書いたようなことを意識して、少額短期保険・保険会社を比較・検討してみるとよいだろう。